感想:映画「やすらぎの森」(2021)。晩年、社会から存在しない世捨て人として、人里離れた大自然の森でひっそりと自由に生きること選択した高齢者たちの物語。それぞれに人知れずの人生がある。 #やすらぎの森

映画「やすらぎの森」

人生の晩年、自分は、どのように生き、どのように死んでいくか。カナダ ケベック州の人里離れた自然豊かな森。そこで、社会の中に存在しない世捨て人としてひっそりと暮らすことを選択した80歳代の人々の物語。予告編を観て、ぜひとも観てみたくなった作品。この度、日本での劇場公開の前に、映画レビューサービスのcocoオンライン試写会で一足お先に鑑賞させていただきました。観てよかった。感想です。

感想:映画「やすらぎの森」

鑑賞し、4つのことを頭にふんわり思いました。

そんなことに頭の思考が向かうきっかけになった物語。

映画「やすらぎの森」。観てよかったです。

1.「自分の人生の晩年を、いかに生きていくのか、そして、いつ、いかに死んでいくのか」

改めて考えるきっかけになる物語でした。

物語では、それぞれの人知れずの事情から、社会からは「存在しない世捨て人」として、晩年を「自由」に生きることを選択した3人の男性、チャーリー、トム、テッドの、湖のほとりの森での共同生活のような様子が描かれます。

そこへこれまた人知れずの事情から1人の女性ジェルトルードが、それまでの生活から逃げ出して、湖のほとりの森にやってきます。

この4人がすべて80歳ほどの高齢者。

カナダ ケベック州の人里離れた大自然の森と湖での彼らの生活と人間模様が、美しい風景の映像の中で情感豊かにゆったりと描かれていきます。

彼らの選択に賛否はありません。彼らそれぞれの人生です。
それらを観て、自分はどうする?ということに思いをはせられてよかったです。

2.「人それぞれに人知れずのそれぞれの自分の人生あり」

当たり前のことなのですが、彼らを観ていて、そんなことにも改めて思いを馳せました。

なぜ、人生の晩年を、存在しない者として、世捨て人として、独り、この森での生活を選択したのか。

チャーリー、テッド、トム、そして、ジェルトルード。

物語のなかで、彼らの半生がゆっくりと語られます。

その中で、トムは、明確には自身のことを語らないのですが、ちょっとした言葉の数々で垣間見られます。

トムは、よく歌うのですが、その時々で歌うカバー曲の数々の歌詞が、その時々のトムの心情を表しているかのようで、沁み入ります。特に、予告編でも一部映像が公開されていますが、トム・ウェイツの「タイム」を涙ながらにアコースティックギターで弾き語り歌うトムの姿はしびれました。

人それぞれに人知れずのそれぞれの自分の人生ある。

知れるのもよし、知ることができない、それもまた良し。現実でもそうですから。

そして、現実問題なのですが、

3.「どのように生きていくにしろ、生活に必要なものを得続けていくためには、継続した生活の糧の実入りの構築はやはり必要」

物語では、そのあたりも描かれます。

人里離れた奥深い森の中で、彼らが選んだのであろう生業は … 。

人が生活の糧として、何を生業にしているのか、それは、人それぞれ。

現実でもそう。

これ、やはり大切。

あと、思ったのは、

4.「人間は、本当のひとりぼっちでは生きてはいけない生物なのかもしれない」

ということ。

3人の男性は、それぞれ、一頭ずつ、犬を飼っています。飼っているというより、ここの住人の一人とカウントするほどのバディっぷりです。彼らからすると、3人で住んでいるのではなく、6人で生きている感覚。毎日の生活の中で、名前を呼ぶと、反応してくれる存在。自分の存在を認識してくれる存在。自称「存在しない者」として生きる選択をしている高齢者たちなのですが、やはり「世捨て人」生活を実際にやってみると独りぼっちはキツくなるものなのかなあ。

それぞれの犬には名前がありますが、トムの犬の名前には笑いました。余談でした。

そして、そもそもなのですが、自称「存在しない世捨て人」として生きているのですが、この3人の高齢者は、それぞれの犬ととに、近くに別々の小屋を建てて別に住みはしているものの、共同生活をしていて、程よい阿吽の距離感を保ちながら相手を尊重しつつ、これまた、とても仲が良いのです。

おそらく、はじめからそうではなかったのではないかなあと推察はするのですが、そこに賛否はありません。彼らはそうですの物語ですので。

私は、その様子を見ていて、物語とは別の頭で、「人間は一生物の個体として、独りぼっちでは生きてはいけない生物なのかもしれないなあ」と、ふんわり思った次第です。肉体的にも精神的にも。もしかしたらですね。ふんわりです。

映画「やすらぎの森」。観てよかったです。

1つの物語を通して、自分の晩年について改めて考えるきっかけになりました。

今回のオンライン試写会での作品の視聴可能期間は、62時間をいただけました。

私は、3回、鑑賞しました。

1回目は、通しで。よかったです。

2回目は、1回目でわからなかったことなど頭において注意深くメモを取りながら、鑑賞。
この時に殴り書いたメモやイラストが、B5版30枚60ページの大学ノート1冊全ページを埋め尽くしました。
1回目でわからなかったこと、気づけなかったこと、見えていなかったことなどが明確に自分なりにわかると、この段階で、「うわぁ … この映画 … 」と、より深い感銘を受けました。

3回目は、ゆったり通しで味わって鑑賞。

余談ですが、カナダ ケベック州 の森。映像を観ていて美しいなあと思い、どんなところなのだろうと地図を見てみました。

森と数多くの湖がある自然豊かな地域ですね。

地図:カナダ ケベック州 アビティビ

また、余談ですが、、

このポスターイメージ。

映画を観る前に見て感じていた印象と、映画鑑賞後に見る印象とは、ガラッと変わりました。。

このシーン、、

映画「やすらぎの森」。2021年5月21日より銀座シネスイッチをはじめ、全国で順次公開です。

映画「やすらぎの森」
映画「やすらぎの森」

作品紹介:映画「やすらぎの森」

物語

カナダ・ケベック州、人里離れた深い森。湖のほとりにたたずむ小屋で、年老いた3人の男性が愛犬たちと一緒に静かな暮らしを営んでいた。それぞれの理由で社会に背を向け、世捨て人となった彼らの前に、思いがけない来訪者が現れる。その80歳の女性ジェルトルードは、少女時代に不当な措置によって精神科療養所に入れられ、60年以上も外界と隔絶した生活を強いられていたのだった。世捨て人たちに受け入れられたジェルトルードは、マリー・デネージュという新たな名前で新たな人生を踏み出し、澄みきった空気を吸い込みながら、日に日に活力を取り戻していく。しかし、その穏やかで温かな森の日常を揺るがす緊急事態が巻き起こり、彼らは重大な決断を迫られていくのだった……。
新しい出逢いと湖畔での穏やかな共同生活。80代の男女を主人公に迎え、人生の晩年をいかに生きるかというテーマを詩情豊かに綴る、愛と再生の物語が誕生した。

引用:映画「やすらぎの森」公式サイト

And The Birds Rained Down Virtual Q&A | Chicago International Film Festival
Canada Now online Film Festival: In conversation with director LOUISE ARCHAMBAULT | Birds’ Eye View
Rueda de prensa ”IL PLEUVAIT DES OISEAUX / AND THE BIRDS RAINED DOWN” (S.O) V.O – 2019 | sansebastianfestival
Press Conference ”IL PLEUVAIT DES OISEAUX / AND THE BIRDS RAINED DOWN” (O.S) – 2019 | sansebastianfestival
Tom Waits – “Time” (Big Time Documentary, 1988) | Tom Waits

関連外部リンク

映画「やすらぎの森」原作小説「And the Birds Rained Down」(英語版 電子書籍)

高橋典幸
高橋典幸

さあ、人生の晩年。自分は、どのように生き、どのように死んでいこうか。  

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