感想:小説「光の人」(著者:今井彰)。戦後、1000人の孤児の生を支え続けた男と孤児たちの切なくも雄々しい物語。 #光の人 #今井彰

小説「光の子」(著者:今井彰)

NHK「プロジェクトX」の元プロデューサー今井彰さんが描く、実在の人物をモデルにした物語。ご自身がパーソナリティをつとめるラジオ番組でその人物に出会い、戦後、1000人の孤児の生を支え続けたその生き方に心を打たれた今井さんは、以来、取材を重ね、6年の歳月をかけて書き上げたという小説「光の人」。感想です。

感想:小説「光の人」

「光の人」タイトルページをめくると、最初のページは、この格言から始まります。

水の一滴(しずく)は、岩に穴を穿(うが)つ

力によってではなく、しばしば落ちることによって

引用:小説「光の人」

全346ページ。

読み終えて、改めてこの最初のページの言葉を味わっています。

小説「光の人」。

まさに、この格言を体現した人々の物語でした。

戦後、廃墟と化した東京を中心に、

全国で12万3千人の「戦争孤児」が生まれた。

自ら飯を調達することも食べることもできず、

寝泊まりする場所すら持たない子供が、

唐突に12万人以上現れたのだ。

67年前、東京大空襲で家族全員を失い、

日本階級社会の底辺である

孤児の群れに転がり落ちた。

無残な戦後だった。

救い出してくれたのは門間幸太郎であった。

仙蔵にとって門間は、

至純の愛を体現した奇跡の人であった。

引用:小説「光の人」カバー

物語が進むにつれて、戦災孤児の仙蔵をはじめとして、幾人かの孤児たちの、それぞれの物語が描かれていきます。

門間幸太郎に出会うまでの孤児となる前の生活と孤児になってしまった後の状況。これが、それぞれ切ない。

読後に、ネット上のSNSや書評サイト等で、読者の感想やレビューを読んでみると、「ぜひ映画化を!」との声もみかけました。

仮にもしも映画化して、これらの描写を忠実に映像化するとならば、映倫区分は「R18+」になろうかと推察されます。

門間幸太郎に出会う前(一部の孤児は門間幸太郎に出会ってからもですが…)に、孤児たちが体験してきた出来事、状況の数々は、それほどにいたたまれないものとして、生々しく描写されています。

そして、それぞれの孤児たちが、門間幸太郎に出会ってからどのように生きていったのか。

門間幸太郎自身は、孤児たちをどのように支援し、その支援を継続するために社会とどのように闘ってきたのか。

その逸話の数々は、切なくも、悔しくも、雄々しくも、微笑ましくも感じ、時に涙しながら、読み入りました。

門間幸太郎が、孤児の支援をしていくにあたり、生涯、胸に刻み込もうと決意した「児童憲章」(制定日:昭和26年5月5日)。物語では、本文の第2条が語られます。

私は、この「児童憲章」基本綱領3つと12条の本文の全文を、これまでに読んだことがなかったので、文部科学省のサイトで全文を読んでみました。

児童憲章

制定日:昭和26年5月5日
制定者:児童憲章制定会議(内閣総理大臣により招集。国民各層・各界の代表で構成。)

われらは、日本国憲法の精神にしたがい、児童に対する正しい観念を確立し、すべての児童の幸福をはかるために、この憲章を定める。


児童は、人として尊ばれる。

児童は、社会の一員として重んぜられる。

児童は、よい環境の中で育てられる。


一 すべての児童は、心身ともに健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障される。
二 すべての児童は、家庭で、正しい愛情と知識と技術をもつて育てられ、家庭に恵まれない児童には、これにかわる環境が与えられる。
三 すべての児童は、適当な栄養と住居と被服が与えられ、また、疾病と災害からまもられる。
四 すべての児童は、個性と能力に応じて教育され、社会の一員としての責任を自主的に果たすように、みちびかれる。
五 すべての児童は、自然を愛し、科学と芸術を尊ぶように、みちびかれ、また、道徳的心情がつちかわれる。
六 すべての児童は、就学のみちを確保され、また、十分に整つた教育の施設を用意される。
七 すべての児童は、職業指導を受ける機会が与えられる。
八 すべての児童は、その労働において、心身の発育が阻害されず、教育を受ける機会が失われず、また、児童としての生活がさまたげられないように、十分に保護される。
九 すべての児童は、よい遊び場と文化財を用意され、悪い環境からまもられる。
十 すべての児童は、虐待・酷使・放任その他不当な取扱からまもられる。あやまちをおかした児童は、適切に保護指導される。
十一 すべての児童は、身体が不自由な場合、または精神の機能が不充分な場合に、適切な治療と教育と保護が与えられる。
十二 すべての児童は、愛とまことによつて結ばれ、よい国民として人類の平和と文化に貢献するように、みちびかれる。

引用元:文部科学省

「児童憲章」全文を読んでみると、物語に登場する満18歳に満たない孤児たちが、なぜ「このような理念の外側に放置されなければならないのだろうか?」という門間幸太郎が感じた熱い気持ちがよりわかりました。

「私の心には、もはや何の迷いもありません。
彼らとまっとうな道を歩いてゆきます。
資金は確かにありません。
ですが、我々の思いはひとつです。
『お金がないからやらない』ではなく、『飢えてもやろう』ということです。
これは人の尊厳をかけた闘いであると信じております。」

引用:小説「光の人」 門間幸太郎

小説「光の人」。私にとっては大切な物語となりました。

小説「光の子」(著者:今井彰)
小説「光の子」(著者:今井彰)

作品紹介:小説「光の人」

作品紹介

戦後、1000人の孤児の生を支えたひとりの男がいた!

NHK「プロジェクトX」の元プロデューサーが描く、実在の人物をモデルにした感涙の物語。

太平洋戦争当時、東京大空襲などによって、多くの戦災孤児がうまれました。戦後の混乱のなか国の支援もなく、両親も家も失った孤児たちは、ある者はなすすべもなく命を失い、またある者は生きるために悪の道を受け入れざるをえませんでした。
その孤児たちに手を差し伸べたのが、本作『光の人』の主人公、門馬幸太郎です。二十代の若き門馬は教師の職を投げ打ち、収入の見通しもないまま、孤児たちとの共同生活を始めます。

実は、この小説には実在のモデルがいます。NHK「プロジェクトX」のプロデューサーだった著者の今井彰さんは、パーソナリティをつとめるラジオ番組でこの人物に出会いました。その生き方に心を打たれた今井さんは以来、取材を重ね資料を集め、書き下ろし小説として、彼の人生を結実させたのです。

食糧難から親の虐待へ。孤児たちが味わう苦しみの様相は時代とともに変わりますが、門馬は公的な支援がないまま、その一切から逃げることなく、戦後1000人の孤児を育てました。その背景には、門馬自身の悲惨過ぎる戦争体験がありました。

こんな素晴らしい男が日本にいたのか。そんな圧倒的な感動と衝撃に言葉を失います。読めば絶対に泣けてしまう、心を揺さぶる感動巨編の誕生です。

引用元:文藝春秋BOOKS

著者 今井彰さん メッセージ

激動の戦後、千人の孤児たちの命と未来を守りぬいた人がいた。最も深く大きな愛だった。その時、彼は十七歳の少年先生。職も我欲もなげうって、半世紀に及ぶ茨(いばら)の道を歩いた。この小説は着想から、六年の歳月をかけて書き上げた。この国の歴史には記されなかった切なく雄々しい愛の物語である。

引用元:文藝春秋BOOKS

『光の人』今井 彰 | BungeishunjuLtd

関連外部リンク

高橋典幸
高橋典幸

みんな、頑張ったなぁ。
切なくも、なんと雄々しい。
心に沁みました。

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