読んでいて何度となく目にうっすら涙が浮かび鼻をすすりました。映画「ブレードランナー」(1982)と、映画「ブレードランナー2049」(2017)を観て、その原案となっているSF小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」(1968)に触れてみたくなり、読みました。世は近未来。アンドロイド狩りでの賞金稼ぎを生業にする人間の男リック・デッカードの物語です。自分が欲しいものを買う大金を得るために委託を受けてアンドロイドを追っています。そんな中、植民地の火星から地球に密かに逃亡してきて潜伏している8体の新型アンドロイドに懸賞金がかけられます。そのうちの2体は、他の賞金稼ぎの男がしとめましたが3体目と対峙中にその男は襲われ重傷をおい入院します。その男から引き継いで残りの6体のアンドロイドの退治を請け負ったのが、リック・デッカード。1体目、2体目。。さあ、どうなるか。というお話で進行します。。。が、この物語、いわゆる単純な勧善懲悪的なお話ではないのです。そこにじわじわ惹きこまれていきます。「人間らしさとは」と「機械らしさとは」との対比が、登場する人間たちやアンドロイドたちとの出来事や事象からあぶりだされ、つきつけられます。
物語
第三次大戦後、放射能灰に汚染された地球では、生きている動物を所有することが地位の象徴となっていた。人口の電気羊しかもっていないリックは、本物の動物を手に入れるため、火星から逃亡してきた《奴隷》アンドロイド8人の首にかけられた莫大な懸賞金を狙って、決死の狩りをはじめた。。。
出典)小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」カバーより
感想
高橋典幸
読んでよかった。もともとはこの小説からインスピレーションを得て創作したのが映画版なんですよね。今、原案の小説を読み終わり、もう一度、映画「ブレードランナー」と映画「ブレードランナー2049」を観たくなりました。映画の物語や登場人物とテイストは、小説からそうとうアレンジされていることがわかりました。空気感も映画の物語は終始どんより重いですが、小説はところどころコミカルなシーンも差し挟まれているので、もう少し軽く読めます。ただ、映画でも周到されていたのは小説の物語であぶりだされていた「人間らしさ」と「機械らしさ」との対比による読者への暗黙の問いです。また、登場人物も一部名前や人物像等が変えられている部分もありますが、小説に登場する主要なキャラクターは映画でも登場しています。映画では小説でのいくつかのエピソードはごそっとカットされている部分も多いですが、個人的には、小説版のJ・R・イジドアのエピソードが泣けました。
関連外部リンク
アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))
posted with ヨメレバ
フィリップ・K・ディック 早川書房 1977-03-01