神保町シアターの「こわいはおもしろい」企画で、加藤泰監督の映画「みな殺しの霊歌」(1968/昭和43/白黒)35mmフィルム上映をまさに今週やっているのですが、水曜からの腰痛と膝痛で、劇場に行けなかったため、自宅にて GYAO!レンタルで観賞。
悲しく切ない物語でした。
これはスクリーンで観たい作品でした。それはまたいつの日にかのお楽しみにとなりました。
それでは、感想です。
感想 | 映画「みな殺しの霊歌」
この作品を観たかったのは、「男はつらいよ」出演以前のさくら役以外の倍賞千恵子さん出演作品を観たかったからです。
本作では、食堂で働く店員の春子役。明るさの中にもどこか影がある女性の役どころ。
ある大雨の夜、佐藤允さん演じる川島が、店じまいを仕掛けた遅い時間に食堂に入り、カツ丼を注文するも右手に包帯を巻いているのに気づいた春子が、箸では食べにくいだろうと、黙ってフォークを渡す処から、ふたりは心を通わせるようになります。
変わっていく新宿の街を呆然と眺めて想いに耽る春子と川島がばったり会うシーン。
春子と川島が仲睦まじくお互いの手相をみるシーン。
食堂の主人から、春子の思わぬ過去を聞かされた川島のシーン。
春子と川島が原っぱでお互いの素生を語らうシーン。
川島が同じ故郷で東京に出てきた青年と過ごした思い出の微笑ましいながらも切ない回想シーン。
北海道釧路市。映画でそう聞く地名ではないので、この映画の台詞で聞こえた時は驚きましたが、共感が増しました。私の故郷です。
川島が電話で食堂の主人に春子への伝言をするシーン。
そして、ラスト。。
魅入りました。
全篇を通して緊張感のあるシリアスで哀しいノアール物語なのですが、本作の構成に山田洋次さんが入っているからなのか、ところどころにその緊張をほぐすかのようなシーンも散りばめられており、時にふっと笑いつつ、最後まで集中して物語の行き末に向かって惹き込まれました。
後に、「男はつらいよ」シリーズで、タコ社長を演じる太宰久雄さんがクリーニング店の主人役であったり、医者役や二代目おいちゃん役を演じる松村達雄さんが、警察の本部長役であったりで、あーこの映画、やっぱり松竹なんだぁとほっとしたりもしました。
また、菅井きんさんがまさかの役どころであったり、オロナミンCのCMに出演していた大泉滉さんが巡査役なのですが調査報告を誰も聞いてくれないとか、深作欣二監督の奥様の中原早苗さんが出演されていたりと楽しめました。
加藤泰監督作品は初鑑賞でしたが、トレードマークと云われるカメラのローアングル撮影、パン・フォーカス、カット割りの妙、なるほどこれがそうかぁと堪能しました。
今回の神保町シアター特集企画には上映スケジュールに合わせられなくて残念。
また、いつの日にか、どこかの劇場さんが、本作を銀幕にかけてくださる機会があったら、ぜひともスクリーンで味わいたい作品です。
高橋典幸
みな殺しの霊歌
監督: 加藤泰
構成: 山田洋次 加藤泰
脚本: 三村晴彦
撮影: 丸山恵司
美術: 森田郷平
照明: 津吹正
音楽: 鏑木創
録音: 中村寛
出演:
佐藤允 倍賞千恵子
中原早苗 應蘭芳 沢淑子 菅井きん 河村有紀
松村達雄 明石潮 渡辺篤
大泉滉 吉田義夫 石井均
須賀不二男 高野真二
諸角啓二郎 角梨枝子
太宰久雄 石井富子
【写真】映画『みな殺しの霊歌』
別作品を観に行った際の神保町シアター全景
別作品を観に行った際の神保町シアター入り口
神保町シアターの「こわいはおもしろい」特集企画
映画「みな殺しの霊歌」ポスター 写真がぼけてしまいました
映画『みな殺しの霊歌』物語
全国に指名手配されている殺人犯の川島正は、あと1年で時効を迎えようとしていた。
ある日、警察から逃れるために飛び込んだマンションで彼は5人の有閑マダム達が繰り広げる秘密のパーティーを目撃する。やがて彼女たちはたまたま配達にやってきたクリーニング店員の少年を部屋に引きずり込み、かわるがわるなぶりものにした。
川島の心に、この猥雑な事件が焼きつき、彼女たちの行為が許されざる事だと思い始めたのは、翌朝マンションの屋上から少年が投身自殺をしたということを聞いてからであった。
町の工事現場でふと知り合ったとはいえ、川島は真面目で健康な少年を心からかわいがっていたのだ。
この日から川島の生活は一変した。
彼は、犯してから殺すという冷酷非道な手口で、5人の女たちへの残虐な復讐を開始するのだった・・・出典)松竹DVD倶楽部
主演 佐藤允さんの息子 佐藤闘介さんが語る 映画『みな殺しの霊歌』
まるで少女のように繊細な心の少年のために復讐鬼となる男の愛と死。“山本周五郎「五瓣の椿」男性版”として企画されたという「みな殺しの霊歌」。ロケ地新宿駅西口附近を歩くと、若き佐藤允に会えたような気がして立ち止まってしまいます。“世界一ハンサムな映画館”神保町シアターで本日最終上映です! pic.twitter.com/VxkRhx6bo5
— 佐藤闘介 (@makotosuke0708) January 31, 2019
「みな殺しの霊歌」の撮影初日。「佐藤君、朝刊を読んで来ましたか」と佐藤允に、加藤泰監督。「その顔は読んでいませんね。時間をあげるからセットのそこでお読みなさい。きっと記事の中に君が怒りを感じるものがある。それを演技に出して下さい。僕は新聞を読んで来ない俳優の顔は撮りませんよ」。 pic.twitter.com/7ab70IGUbC
— 佐藤闘介 (@makotosuke0708) January 29, 2019
“佐藤允さんの素顔は?どんなお父さんだったのですか?” 父はヒーロー、凶悪犯、刑事、辻斬り、信長、弁慶、普通のお父さん、様々な役を演じました。僕は「どんな役でもあのままです。全部、父です」と答えます。父は悪役のときもまるで自分が正しいんだ、正義なんだと信じるように演じていました✨。 pic.twitter.com/WpcCRoBI29
— 佐藤闘介 (@makotosuke0708) November 27, 2018
神保町シアター上映中「みな殺しの霊歌」。倍賞千恵子さん演ずる運命の女、春子。その素性を明石潮さんの食堂の主人から聞きながら、佐藤允がうっすらと浮かべて行く、涙。その涙は、紛れもなく本物の、父の涙です。カメラを向けられてもありのまま。そういう“俳優”でした! pic.twitter.com/ox2K3ZoUUw
— 佐藤闘介 (@makotosuke0708) January 27, 2019
連続殺人鬼の愛と死、神保町シアター“こわいはおもしろい”26日からは佐藤允自己ベスト、巨匠・加藤泰監督作品、戦慄のクライム・サスペンス「みな殺しの霊歌」が始まります!フィルムは良好プリント、ヒロイン倍賞千恵子さんの代表作の1本でもあります。ぜひ大画面、フィルムの質感でご覧ください! pic.twitter.com/EOstiRdCsi
— 佐藤闘介 (@makotosuke0708) January 25, 2019
PHP新書から発売された、倍賞千恵子さんのエッセイ「倍賞千恵子の現場」に、加藤泰監督「みな殺しの霊歌」での、父との現場風景が語られていました。この映画での倍賞さんはため息が出るほど可愛い、そして哀しく、美しい。父にとっても本人自己ベストにあげる作品でした。
— 佐藤闘介 (@makotosuke0708) August 29, 2017
関連外部リンク
参考
神保町シアター公式サイト
参考
こわいはおもしろい ホラー!サスペンス!ミステリー!恐怖と幻想のトラウマ劇場 2019年1月19日(土)~2月15日(金)神保町シアター 特集企画
参考
松竹DVD倶楽部ショップサイト
参考
映画「みな殺しの霊歌」レンタルGYAO!ストア
映画『みな殺しの霊歌』DVD
映画『みな殺しの霊歌』★★★★4.0点。 神保町シアターの「こわいはおもしろい」企画で、加藤泰監督の映画「みな殺しの霊歌」(1968/昭和43/白黒)3… https://t.co/uhgWrzIvC6 #Filmarks #映画
— 高橋典幸⛅ (@NoriyukiJP) January 31, 2019
高橋典幸