美しくも哀しい。ドイツ・フランス合作映画『水を抱く女』(2020)をcocoオンライン試写会で鑑賞。ドイツロマン派幻想文学古典小説「水の精(ウンディーネ)」(1811 / 著者:フケー)をモチーフに、舞台を現代に創作された新しい物語。感想です。
全編の要所で繰り返し奏でられる挿入曲バッハ「協奏曲ニ短調(マルチェッロのオーボエ協奏曲による)BWV974 第二楽章アダージョ」。
ピアノの切なく美しい旋律が、幻想的な物語とともに心に残りました。
バッハのピアノの挿入曲が印象的な本作ですが、もう1曲、強烈に記憶に残る歌が不意に登場します。
これは、笑いました。
何の歌かは本作をご覧になる時のお楽しみということで秘密。
愛する二人が共有した大切な歌。
本作主演ウンディーネ役で第70回ベルリン国際映画祭 銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞されたパウラ・ベーアさん。
ベルリンの都市開発を研究する歴史家が博物館でガイドとして説明する姿がかっこよく見入りました。
人からの愛を感じられず心が無いかの状態のときのウンディーネと、人に愛され心が宿った幸せな状態のときのウンディーネとで、言葉がなくとも、目、表情、しぐさでその心情の違いを魅せる。お見事。
物語終盤のウンディーネの決断。
そして、ラストカットシーンからのエンドロールの映像の美しさ。
思わず、
「うわぁ… ウンディーネよ… 。」
と声を出してしまいました。
そのまま物語の余韻に浸りました。
ドイツの都心の街並みと田舎の風景。
都心と田舎を往来する列車、駅のホーム、車窓の景色。
潜水作業員のクリストフが潜る湖。
音響、挿入曲。
幻想的な大人のお伽話。
映像と音と物語の美しさを味わえました。
映画「水を抱く女」。
2021年3月26日(金)より、新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺ほかにて全国順次ロードショー。
この機会に本作がモチーフにしたというドイツロマン派幻想文学古典小説「水の精(ウンディーネ)」(1811 著者:フケー/訳者:識名章喜)を読みました。
古典小説と新作映画のそれぞれの物語。
双方味わえてよかったです。
映画「水を抱く女」鑑賞のこの機会に、クリスティアン・ペッツォルトさん監督・脚本、パウラ・ベーアさん、フランツ・ロゴフスキーさん出演の映画「未来を乗り換えた男」も鑑賞。パウラ・ベーアさんの歩きながら後ろを振り返る表情は、双方の作品で印象的でした。