第二次世界大戦下、東ヨーロッパの大都市の親元から安全のために田舎の僻地に疎開させられた6歳の少年。肌の色も目の色も髪の毛の色も話す言葉さえも異なる村々を、ひとり転々とさせられながら「いつかは親元に戻る」と懸命に生きようとする少年。その行く先々で、少年が出会う人々、見聞き、体験させられることが、白黒映像で時系列に映し出されます。映画「異端の鳥」。感想です。
映画「異端の鳥」感想
映画館のスクリーンと音響で観ておきかった作品。
美しいほどの風景の白黒映像。
戦時下、疎開先でひとりぼっちの6歳の少年が、見聞きし体験していく4年間の出来事を、その時々で出会う人の名前がタイトルにつけられた9つの章で、淡々と、時系列に見せられる。
戦時下の特異な状況での出来事の数々が描かれている物語ではありますが、現代にあっても起こり得ていることなのではと感じました。
異物は排除。
または、人間としての尊厳など顧みずに扱う。
人間のサガなのか。
現代でもまったく変わっていなのではないだろうか。
切なくなりました。
異端の鳥として扱われる少年の物語。
ラストは涙がこみ上げました。
少年よ、よくぞ、よくぞ、頑張った。。
傑作です。
【写真】映画「異端の鳥」アップリンク渋谷
【動画】映画「異端の鳥」予告編
【動画】映画「異端の鳥」第76回ヴェネツィア国際映画祭でのワールドプレミア上映後のスタンディングオベーションの様子
上映時間2時間49分。この物語を最後まで見届けると、監督、役者の皆さん、制作クルーの皆さんに、惜しまない拍手を送りたくなる心情がわかります。
【動画】映画「異端の鳥」出演俳優12名インタビュー
【動画】映画「異端の鳥」本編映像一部
【動画】映画「異端の鳥」撮影時の様子とオフショット
これを観て、すこしホッとしました。。映画だったんだよな、、と。
【動画】映画「異端の鳥」エンディングテーマ曲「HORCHAT HAI CALIPTUS」(ユーカリの木立)
とても印象に残る素敵な歌、そして、素敵な歌声。。エンドロールで流れるこの歌。物語の余韻に、身体と頭の緊張感が緩むことなく、どっぷりと浸りながらエンドロールが流れるスクリーンを眺めていました。この歌。劇中で鳥売りの男レッフの恋人ルドミラを演じたイトカ・チェヴァンチャロヴァー(Jitka Čvančarová)さんが歌っていることを、のちに劇場パンフレットを読んで知りました。
イスラエルの著名な作曲家であるナオミ・シェメルによって1963年にヘブライ語で作詞・作曲された。歌詞の内容は「昔々、ヨルダン川のほとりにあるユーカリの森のそばで、父と母は家庭を持った。時は過ぎて、美しかった母の髪は白くなった。けれど、川の流れは今も変わらず、ユーカリの森とともに、静かにそこに佇んでいる。」というもの。
引用元:映画「異端の鳥」 劇場パンフレット より
MP3ダウンロード:映画「THE PAINTED BIRD」チェコ共和国 公式サイトより
原作小説「ペインティッド・バード」
映画では、口数少なく描かれる少年ですが、原作小説では、少年が見聞きし体験していくすべての出来事が「ぼくは、」で綴られています。映画映像も切ないですが、少年視点でその時々に感じた少年の心の思いが文字で綴られている原作小説も切ないです。読んでから映画を観るもよし、映画を観てから読むもよしです。原作小説と映画、双方がこの物語を補完しあいます。
著者:イェジー・コシンスキ / 訳者:西成彦 松籟社 2011年08月
今日の映画メシ
「ホルモンラーメン」 ガガナラーメン極 渋谷店
映画「異端の鳥」(R15+ / 2020)を Amazon Prime Video で 今すぐ観る
関連外部リンク
著者:イェジー・コシンスキ / 訳者:西成彦 松籟社 2011年08月
高橋典幸
確かに戦争下での物語ではありますが、現代でも変わってはいないのでは。。と、切なくなりました。異物は排除する。。人間のサガなのか。